仮面夫婦

結婚生活も長くなれば、おそらく多くの夫婦もそうだと思いますが、夜の生活は疎遠となっています。別に不仲という訳ではありませんが、互いに干渉する事もあまりありません。仕事仲間と飲んで日付が変わって帰宅しても、特に不満を言われる事もありません。妻は先に寝ています。それが私達にとって、ごく普通のスタンスだと思っていたのです。

あの日までは・・・
ある日、上司と車で移動中、信号待ちをしていた時の事です。ナのt、目の前の横断歩道を見知らぬ男と妻が歩いていたのです。最初はパ-ト先の男性かと思ったのですが、明らかに妻の服装はよそ行き風で、相手の男もキャップをかぶってどこか不自然。仕事仲間とは思えませんでした。頭の中をぐるぐる巡る疑問を振り払うように、その日は何とか仕事をこなして帰宅したのです。

家で待っていた妻は、昼間の着飾った風では無く、いつものエプロン姿でした。べつにこちらに視線を向けるでもなく、「おかえり」といつも通り。ただひとつだけ違ったのは、私としては珍しく定時退社だった事を「早かったのね」って。
「体調が悪いんだ」。そう言い残して寝室に入った私の目に、書斎のパソコンが止まったのです。シャットダウン処理中で、未だ画面が残っていました。駆け寄って私は直ぐに、パソコンを立ち上げ直し、インタ-ネット履歴を見たのです。そして唖然とすると同時に、昼間の疑問が全て解けたのでした。

妻は何と、人妻サイトを利用していたのです。誰かとやりとりの最中、突然私が帰宅したので慌ててパソコンを消したところだったのです。どうやら夫婦仲に疑問も不安も不満も抱いていなかったのは、私の方だけだったようでした。怒りというか何と言うか、言葉に出来ない感情に支配されてしまいました。

私は自分用のパソコンをもう1台買いました。もちろん、妻は何も言いません。私は妻が利用しているのと同じ人妻サイトに登録したのです。かと言って、夫婦生活はこれまでと何一つ変わりません。仮面夫婦です。互いに人妻サイトで出会った相手とのデ-トが、それぞれの楽しみと言うか、生き甲斐的になっています。

それから、妻は知らない事がひとつ。私は妻のハンドルネ-ムや、どんな会話をして誰と会っているのかなど、全てを知っているのです。これが何とも言えない優越感なのです。

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2011年10月12日

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